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古典文学に見る男と女シリーズ 第55回
いつはりの なき世なりせば いかばかり
人の言の葉 うれしからまし
古今和歌集 恋歌巻十四 読人知らず
なんだって言うのかしら。
まただわ。
今夜は絶対に何があっても来るなんて言うから、
ご馳走もお酒も用意したというのに、
日暮の酉の刻あたりに使者がきて
「少しばかり遅くなります」
なんて・・・・
少しばかりってどればかりなのよ。
もう亥の刻もとうに過ぎているわ。
腹立ち紛れに、私は用意した鮎の熟れ鮨を湯漬けで食べて、
女童に下げさせてしまった。
ふぅ・・・
腹が立つと、どうしてこうも食欲が収まらないのかしら・・・
湯漬けがいけなかったわ。三条の中納言のダイエットを笑えないわ。
少し膨れた胃の辺りをさすっていると、
女童の細かい足音と大きな足音がが重なりこちらに向かって来る。
「もうお休みになられてますので、今しばらくお待ちくださいませ」
「いいや、どの道同じことだ、構わん」
大きな声は、私がずっと聞きたかったあの声。
居住まいを正して、私は背中を伸ばした。
と、同時にあの人が入ってきた。
「まだ、起きていてくれてたのか」
「いえ、もう休むところでした」
「待っててくれたのだろう?」
「待つ?誰を?」
「何をつんつんしているんだ?こうして来たというのに。
今日は、来ると言ったろう。それに遅くなったが、遅くなるというのも使わせたろう?」
「はて、『来る』は『来られないかもしれない』
『遅くなる』は『来ない』という意味ではございませんでしたかしら」
「まぁまぁ、そんなにスネないでおくれよ。
大変だったんだぜ。バタバタだよ。色々あってな。
もう、俺としては、お前に逢いたくて逢いたくて仕方がないんだぜ。
なのに、どうも出る間際になると、面倒なことが起きるんだ。
多分な、俺がお前に逢えると思うと、嬉顔になるから、
誰がが意地悪するんだな、きっと。ヤキモチを妬いている奴がいるらしい」
「そうですか、そうですか」
「おいおい。むくれないでくれよ。むくれた顔もいいが、
俺は、お前の笑った顔が好きなんだ。ほっとするんだよ。
なっ。許してくれよ。気持ちを解して、なっ」
そんなことを言いながら、私を背中から抱くのよ。
この人は、いつもそう。こんな具合よ。
そうそう易々と懐柔させられないわよ。嘘ばっかりなんだから。
「頼むよ。いい顔みせてくれよ。いい声聞かせてくれよ」
「声、ねぇ
いつはりの なき世なりせば いかばかり 人の言の葉 うれしからまし」
流行の歌を歌ってやったわ。
「おいおい。俺が嘘をついているっていうのかい?
そりゃぁ世の中は嘘ばっかりだ。
世の中が偽りも何にも無くなって、みんなが本当の事しか言わなくなれば、
俺のいう事も信用できるってことかもしれないが、
本当の事しか言わなくなったらどうなるか、お前なら良く分かるだろう?
嘘ばっかりの中でも、こうして俺がお前に逢いに来たというのは真実なんだぜ。
それでいいじゃないか。なっ」
そう言ってあの人は、私の胸元に大きな手を入れてきた。
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今回は小咄で・・・・千年前の。
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