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あるお話(2)

2007年12月09日[19:12:56]

Y子の口吻は、恋をしている女性そのもの。
甘くうっとりとしているが、
誰かに話したくて仕方がないという感じで、
薄いボルドーにグロスがかかったルージュで染められた唇から、
次から次と甘美な色の言葉が溢れ出している。
 
今まで、誰からも言われたことがない、相手からのストレートな愛の言葉、
いやらしいけれど、女としての自分を取り戻してくれるような淫靡な表現。
 
Mは、出来るだけ好奇な目にならないように、務めて穏やかな表情でY子の話を聞いた。
そうしなければ、Y子の話が危うい方向に走り出しそうだったから。
それに、話を聞いているうちに第三者として解せない部分に気付いていったから。
 
 
 
穏やかにというMの願いとは裏腹にY子の話は、どんどんエスカレートしていき、
家族と別れても愛に生きたいとまで・・・
 
「それは、まずいわよ」
「Mちゃんには、わからないかもしれないけれど、
私、夫しか知らないの。このままなのかしらって焦るの。
でも、彼で私は変わったわ。綺麗になりたいって思うの。
いつ会えてもいいようにって、いつでも綺麗にしていたいと思うようになったの。
Mちゃんのように、お仕事している人は普通かもしれないけれど、
家庭の専業主婦がそう思うためには、それなりの思いきりとか、勢いが必要なの」
 
確かに、Y子の言いたい事は、Mにも理解出来ないでは無いが、
恋をしなれない女性の甘さや、緩さ、危うさが心配になる。
 
昔からの大切な友人のことだから、何とかして冷静さと理性を持ってもらいたい。
相手の男はどんな男なのか。
Mの第六感が、相手の男を突き止めなければならないと指示を出しているような気がした。
 
 
「顔は知っているの?」
「ええ。と言っても子供の頃の顔だけど・・・
小学生の頃の写真なのよ。福山雅治にそっくりなの。
絶対に素敵な男性になっていると思うの。あまり変わっていないって言うし」
「あなたの写真は送ったの?」
「先に私の写真を送ったわ。前に見せたでしょ。七五三の時の。
あれを携帯で撮って送ったの」
Y子は、美人。それも未だに超がつくほどの。
学生時代、Mと同じモデルクラブにいたが、
こんなにも綺麗な女の子がこの世にいるなんて信じられないと、
MはY子と一緒のフレームに入るのをためらっていたくらいだった。
渋谷センター街を普通に歩けなかったと言っても、決して大げさではない。
そのY子が、上等な着物を着付けして、娘の七五三で家族と写っている写真。
「本当に、あなた綺麗ね・・・・」とMはため息をついた。
その写真を相手に送ったと言う。
普通の男だったら、臆してしまうだろう。
子供の頃の写真を返した男の気持ちが分かる。
 
「名前は?ハンドルネーム?」
「ペンネームってこと?下の名前だけだけど、本名だと思うの。
メールをパソコンから送ってくるのね。そのアドレスが、名前と数字だから」
「もしかして、yahooとか?」
「そうそう、なんで分かるの?」
出会い系サイトで知り合った相手に、固定アドレスを教える人間はそういない。
何かあったら、すぐに消すことができるアドレスを使うことは常識。
だが、それは言わず普通のこととMは答えた。
 
「よく、yahooのアドレスなんか、ふざけたアドレスつけている人多いのに、
本名をつけているなんて、真面目な人なのね。どんなアドレスなの?」
MはさりげなくY子を誘導するように聞いた。
「×××××0000。数字は彼の誕生日だから、覚えやすいの。正直よね」
もし、それが本当であれば、その男、隙がたくさんありそうだ。
これは、かなり簡単に辿くかもしれないとさらにY子に質問する。
 
「何やっているひと?」
「輸入雑貨の会社を経営しているみたいなの。
インターネットにお店を持っていたりしていてね、それでいつも忙しいらしいの。
どういうお店かしらって思うのだけど、パソコンじゃなきゃ見られないと言うの。
今度会えたら、直々に教えてくれるって。
Mちゃんみたいにパソコン持ってきてくれるって言うの。
それまでは、知らない方が楽しみが大きいでしょって。
でも、知りたいわ」
「何のお店かしらね」
「アジア風というかエスニックな小物や家具やインテリアらしいわ」
「あなたのイタリア趣味とは、随分と違うのね」
「そんな事ないわ。最近はエスニックな家具なんかもお部屋に置いているのよ」
「その人の影響?」
「そうね。家中、彼のお店の家具で埋めてもいいわ。
それより、二人だけのお部屋をマンションに借りてもいいわ。
エスニック調に家具と調度品を整えて・・・・」
「失楽園みたいだわね」
「あらそうかも。そのくらいの勢いかもしれないわ・・・・」
 
 
ふぅーっと、Y子が遠くを見る。
きっと男とも、そういう話をメールで数多くやりとりしているのだろう。
 
 
その他にもY子から小一時間話を聞いて、いくつかの情報は揃った。
 
「私、これから義母と日本橋に行く約束しているから、もう行かなくちゃいけないわ。
Mちゃん、ゴメンナサイね。又ね」
「いいのよ。又お話聞いてあげるからね」
「ええ。ありがとう・・・・」
足早にY子が立ち去った後、カフェのテーブルでMはPCを起動させた。
そしてブラウザを立ち上げて、キーワードを入力した。

>>続きます

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コメント一覧
この記事へのコメント◇
うぅーむ。
ミイラ取りが、ミイラに。
という方向へ行かないことを願いつつ・・・

まて次号!www
2007/12/09(日) 21:41:00 | URL | 菜月 #[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2007/12/11(火) 10:12:15 | | #[ 編集]
はじめましてみぃです。
私もY子さんと同じで何もかも主人が初めての人です。
あるきっかけで主人に彼女がいることが分かりました。
最初はショックだったけど私も周りを見てみようと思い目を向けたとたん声を掛けられたり・・・(意識ってすごいですね)
今では彼氏もできました。
私の場合は主人を尊敬してしますし、別れるつもりはありません。
彼は私を女性として見てくれて大切に扱ってくれます。
主人とは同士、彼とは女性って感じです。
Y子さんのいつでも綺麗にしていたいって気持ちが今の私とダブり取り留めのない文章ですがコメントさせていただきました。
2007/12/11(火) 10:59:13 | URL | みぃ #[ 編集]
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▼菜月ちゃん
お久しぶりッ!
待ってくれ次号(笑)

ミイラには・・・・ならんから(≧∇≦)ノ彡

▼2007/12/11(火) 10:12:15 にコメントを下さった●●ちゃん
怯える必要はないと思いますよ。
彼様は、それが甲斐性と思っていらっしゃって、
その為に頑張って働かれているのですもの。

いいんじゃない?
それが女の甲斐性でもあると思いますよ。
男の頑張りのブースターになっているのですもの。


▼みぃ様
はじめまして。
ご主人様に他の女性・・・・それはショックでしたでしょうね。
でも、そのエネルギーを別に向けて、女として開花させるなんて立派です。
きちんと現実にも目を向け、非日常も生きる。
それこそ大人の女性。
素敵な恋のお話、お聞かせくださいね。

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2007/12/11(火) 23:50:48 | URL | my #[ 編集]
momoちゃんへ
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▼momoちゃん
ごめんなさいね。
何件も来る広告コメントの削除設定にmomoちゃんのipが入ってしまったようです。
気が付かなくて、心配させてしまって申し訳ないです。
『許可』に戻しましたが、いかがでしょうか?

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2007/12/11(火) 23:52:03 | URL | my #[ 編集]
よかった~
これで「継続努力」のお礼のコメントが書けます。
気持ちをしっかりと持って、ゆったりと恋愛を構える。
彼が大好きだという気持ち、彼といっしょにいたいという気持ちは変わらないから、ときにはアプローチを楽しむゆとりが必要なのかもしれないですね。
上手にバランスをとっていきたいと思います。

Y子さんの気持ちなんとなくわかる気がします。
きっと今まで経験したことのないときめきのようなものを感じているのでしょう。
相手の方が不誠実な方だと心配ですが・・・
2007/12/12(水) 08:52:22 | URL | もも #[ 編集]
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▼ももちゃん
そうね、何事もバランスが大事ですよね。
ってサラ金のコマーシャルかってね。

重くならずに、ゆったりと。ね。


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2007/12/13(木) 00:49:50 | URL | my #[ 編集]
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貴女のお悩みと同じお悩みをお持ちの方が救われるかもしれません。
できれば公開にしてくださいませんか。
HNを代えられてもOKなので。
 


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