古典文学に見る男と女シリーズ　第18回

月夜よし 夜よしと人に つげやらば
　　　　　　　　　　　こてふににたり 待たずしもあらず
古今和歌集　巻十四　恋歌四　692番　読人知らず

月夜には 来ぬ人待たる かきくもり
　　　　　　　　　　　雨も降らなむ わびつつも寝む
古今和歌集　巻十五　恋歌五　775番　読人知らず

君やこむ 我やゆかむの いさよひに
　　　　　　　　　　　真木の板戸も ささず寝にけり
古今和歌集　巻十四　恋歌四　690番　読人知らず

今こむと 言ひしばかりに 長月の
　　　　　　　　　　　有明の月を 待ちいでつるかな
古今和歌集　巻十四　恋歌四　691番　素性法師

月を愛でる季節ですね。
月が入る歌を四種あげました。
いずれも古今和歌集に入っている歌です。
古今集はご存知のように、1111首の歌を20巻にカテゴリ分けして編纂されている歌集です。
春・夏・秋・冬・賀・離別・羇旅・物名・恋・哀傷・雑・雑体・大歌所御歌・神遊びのうた・東歌・墨滅歌と大別され、
更に巻の中の歌も季節であれば時系列で並べられたり、
恋であれば、作者は違いますが、ストーリーのように関連付けて並べています。
是非とも小説を読む感覚で読んでいただきたい歌集です。

今回の並び順ですが、本来ならば番号順が筋なのかもしれませんが、
myの解釈で上の並びにいたしました。
692番→691番→775番
690番と二つのシチュエーションにしてみました。

『月夜よし 夜よしと人に つげやらば こてふににたり 待たずしもあらず』
「月がきれいよ」とか「素敵な夜よ」とメールしたのはね、「来て」ということなのよ。
わかる?ただ送ったわけなどないじゃないの。
お返事くらいくれたっていいじゃない。何なのよ。

『月夜には 来ぬ人待たる かきくもり 雨も降らなむ わびつつも寝む』
ふぅ～。どうせ今夜も来てくれないのよね。
でも、こんなにも月がきれいな夜だったら、「もしかして」なんて期待してしまうの。
もう、雨でも降ってくれたらいいのに。
それだと「雨だったからこれなかったのね」って思って寝られるのに。

『君やこむ 我やゆかむの いさよひに 真木の板戸も ささず寝にけり』
十六夜(いざよい)の月が輝いているわ。
どうなのかしら・・・あなた。来てくださるのかしら。
もう、私が行こうかしら。
あれやこれや考えためらっているうちに扉も閉めずに寝てしまったわ。

*** *** *** *** *** *** *** *** *** ***

『今こむと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな』
「今いくよ」なんてあなたが言ったものだから、ずーっと待ってたのよ。
ずーっとよ。この長い九月の夜をずーっとよ。
とうとう、有明の月が出てきちゃったじゃない。

『今こむ』を分けたのは、上の三首と違い、月を見ながら待っていたのではなく、
朝方の有明の月が出てしまったという歌なので。

*** *** *** *** *** *** *** *** *** ***

月を愛でるのは一人がいい。
花火や星は誰かと一緒に感激したいけれど、
月には孤独が似合う。
キュンとなるの。

悲しいわけではないのに、涙か出ちゃう。
恋する(オトメ)大人女だもん。

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